死にゆく僕に君は何か声をかけただろうか

例えば、俺がお前より早く死んだとする。

そうだな、流れ矢に当たったことにしよう。俺はあんまり前線とか出るタイプじゃないから、それぐらいが想像するのに無難かもしれない(投石は問題外)。

俺の突然の死に、お前はどうするだろう。

そうだな、死ぬ寸前まで俺はお前といつもみたいに談笑してたことにしようか。
その方が、わかりやすい。ただ、お前は俺と違って前線に出ていくタイプだから、これはちょっと想像しにくいかもしれないね。

もしこれがお前だったら、俺はもう凄いことになるんだろうけれど、お前は一体どうするんだろう。頭の中真ッ白になって、喚いたり泣いたりしてくれるんだろうか。
孟達、孟達って何度も名前を呼んでくれたりするんだろうか。

案外、お前のことだから怒って俺の事を殴るかもしれないね。
そうしたら俺のことだから、きっと飛び起きて謝るだろうな。

嘘、嘘。ごめんごめんって何十回言ったら許してくれるだろうか。
って、俺はもう死んでる設定なんだから、そんなことできないか。

そうしたら、誰が一体お前を慰めるんだろうね。

無難に大徳殿かな。でもあの人はいろいろと忙しいみたいだから、会ってくれるだろうか。
くれなさそうだね。それに、隣にはいつも厳しい顔した軍師もいるし。

まだ歳若い阿斗君かな。
大分天然の気が強いみたいだから、かえって癒されるかもしれないね。
ただ、お前の立場だとあんまり会えないかもしれないね。危険視されちゃうから。

他の変な男は絶対に駄目。
俺は多分祟っちゃうね、その男を。申儀だの申耽だのは特に駄目だよ。あいつらは腹の底で何考えてるかわかったもんじゃないからね。俺みたいにさ。

…なんかそう考えたら、絶対お前より先に死ねないな。
死んでもお前のことが心配なんて、俺はきっと病気だね。
心配事が山積みなお前も病気かなと思うけど(特に何かと鈍くさい処はどうにかした方がいい)。

「孟達、飯の時間だぞ」

両肘をついて、ぼんやり目下の机を眺めていたら、突然そんな声が空から降ってきた。

「ああ、はいはい」

そう返して俺は座した席を立つ。そして何気なく切り出してみた。

「劉封、お前は俺が死んだらどうする?」

すると劉封は一瞬きょとんとしてから、何気なく答えた。

「ぶん殴る」

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