明日を生くる者へ

「ねえ、楽しく生きてますか」

いつだったか、あの男がそう言った。
けらけらと明るい声で笑いながら、そんな答えづらい質問をするのだ。当然のように、答えに詰まる。

楽しく生きているか?
今まで自分は、楽しいと思った事がないから、わからない。

「どうせお前の事です、戦ぐらいが楽しみなんでしょう」

全く腐った考えですよ、と本当にそう思っているのかいないのか、彼は呆れたように肩を竦めた。
だから、正直に答えた。何故だろう、この男に呆れられるのは、とても嫌なのだ。

「俺にはわからぬ」

答えに一瞬、きょとんと目を見開く。
そしてやがてその目を元の狐目に戻し、奴はまた笑った。

「なら今度楽しく生きる方法を教えてあげよう、呂布
 楽しい人生を生くる者は、決して不幸にはなりえないのだから」

笑い声とともに乗せたその言葉に、真実は幾許か。
白い白い喉元が、言葉の数だけ動くのを、俺はじっと眺めていた。

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