例えばこんな晴れた日に

ひゅうひゅうと口から息が漏れている。

「ダッセ」
「うっさい」

呆れたように半眼の孟達と、一生懸命な目で口を尖らせている劉封
二人は城下を伺える城壁に登り、何をするでもなくその場に座り込んでいた。

ひゅうひゅうと音が漏れているのは、劉封の口からだ。

「口笛ぐらい練習しなくても吹けるだろ」

孟達が溜息とともに眉をひそませながら言えば、

「最初から吹ける奴はそういうんだ」

いささか機嫌を悪くしたのだろうか、
劉封は眉根を寄せて唸るように言った。声音もかたい。
その言葉と態度に、孟達は肩を竦めた。

「誰の影響だっけ?趙将軍?」
「違う、錦馬将軍だ」

錦馬将軍。言われて孟達は軽く上天を見上げる。

「かっこよかったの?」

あの人は元々かっこいいけど、と続けて問う。
すると劉封は数度深々と頷くと、満面の笑みで、

「あの方がお一人で夕陽を背に口笛を吹かれていたことがあったんだ」

かっこよかったなあと目を輝かせながら言う。

孟達はアホかと呟きながら、隣の同僚を見た。

「隣にこんなにかっこいい同僚がいるじゃん」

ぼそりと呟けば、あからさまに呆れたような顔で劉封が振り返る。

「口笛だって俺、超うまいよ。楽隊なんて目じゃないね」
「…お前には錦馬将軍みたいな一種独特の哀愁はないだろ」

あれが最大の魅力なんだと力説する劉封を片目にとらえ、
孟達は盛大に溜息をついた。

「お前が感じ取ってくれないだけなの」

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